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測定誤差と擾乱の不確定性に関する新たな不等式の実験的検証に成功 研究活動 | 研究/産学官連携

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(1)

測定誤差と擾乱の不確定性に関する新たな不等式の実験的検証に成功

<概要>

東北大学電気通信研究所・枝松圭一教授,名古屋大学大学院情報科学研究科・小澤正直教授ら の研究グループは,量子力学の基本原理のひとつである「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」 に関して,「ハイゼンベルクの不等式」が破れており,小澤が提案した「小澤の不等式」と,新た に提案された「ブランシアードの不等式」が成立していることを,弱測定と呼ばれる新しい計測 法を用いた実験で検証することに成功しました。本実験技術は,量子暗号の技術開発に重要な役 割を果たすことが期待されています。

量子力学では,二つの物理量(例えば位置と運動量)の測定に関して,一方の物理量の測定誤 差と,その測定によって他方の物理量が乱される量(擾乱)との間には,一般に,一方を小さく しようとすれば他方を犠牲にしなければならないという「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」 があるとされています。この関係は,ハイゼンベルクが提唱した「ハイゼンベルクの不等式」に よって正しく表現されるものと思われてきました。しかし,小澤は,ハイゼンベルクの不等式が 成立しない場合があることを理論的に明らかにし,2003年に世界で最初にハイゼンベルクの不等 式に代わって常に成立する新たな関係式(小澤の不等式)を提唱しました。昨年来,本研究グル ープを含む複数の実験グループが,中性子や光子を用いた実験によって,ハイゼンベルクの不等 式が破れ,小澤の不等式が成立することを実験的に検証しました。

さらに今年,オーストラリアのブランシアードによって,測定誤差と擾乱に関する新たな関係 式(ブランシアードの不等式)が提案されました。この関係式は,小澤の不等式を含む改良型で, その実験的検証が期待されていました。今回,本研究グループは,光の偏光に関する「弱測定」 と呼ばれる新たな計測法を用いて,ハイゼンベルクの不等式が破れており,小澤の不等式とブラ ンシアードの不等式が成立すること,そして測定された誤差と擾乱の関係が,ブランシアードの 不等式が予言する限界に近いものとなっていることを実験的に初めて確認しました。

本研究は,総務省・戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)による研究プロジェクト「擾乱 計測技術に基づく安全な量子通信の研究開発」の一環として実施され,「測定誤差と擾乱に関する 不確定性関係」の新しい理論に基づき,弱測定によって通信路の擾乱を計測することにより,秘 匿性を実現する新しい量子暗号技術の開発を目指しています.今回の実験は「測定」という科学 技術の基本的事項において,ハイゼンベルクの不等式に代わる新たな基本的限界が存在すること を初めて明瞭に検証したもので,量子力学における基本原理の見直しとなることはもちろん,従 来の限界を超えた超精密測定技術や普遍的な誤差・擾乱関係に基づく新たな量子情報通信技術の 開発が期待される特筆すべき成果と考えられます。

この研究成果は,20141 1 日に米国物理学会論文誌「Physical Review Letters(フィ ジカル・レビュー・レターズ)誌オンライン版に掲載される予定です。

(2)

<研究の背景>

ミクロな世界を支配する物理学の基本原理である量子力学では,二つの物理量(例えば位置と 運動量)の測定に関して,一方の物理量の測定誤差と,その測定によって他方の物理量が乱され る量(擾乱)との間には,一般に,一方を小さくしようとすれば他方を犠牲にしなければならな いトレードオフの関係があるとされています。1927年,ハイゼンベルクは,有名な「ガンマ線顕 微鏡の思考実験」において,物体の位置(x)を非常に精密に測定しようとすると,測定に伴う反 作用によって物体の運動量(p)が不可避的に乱されてしまうことを見出し,位置測定の誤差(ε(x)) と運動量の擾乱(η(p))との間には次の関係式が成立するものと考えました。

(1)

この関係式を一般の物理量ABに拡張したものが

(2) です。ここで,ε(A)およびη(B)は各々,Aの(2乗平均平方根)誤差およびBの(2乗平均平方根) 擾乱(注1),右辺は です(注2)。これらの関係式(1)および(2)は,「ハイゼンベ ルクの不等式」と呼ばれています(注3)。

ハ イ ゼ ン ベ ル ク の 不 等 式(1)お よ び(2)は , ア ー サ ー ズ-ケ リ ー , 小 澤 , 石 川 ら に よ り , 不 偏 性 条 件(測定値の平均値が測定される物理量の期待値に一致するという条件)が満たされる特別な場 合に成立することが知られていましたが,小澤は, 2003 年,アーサーズ-ケリーらの式を含み, 常に成り立つ新たな関係式

ε(A)η(B) + 1

2

N (A), B

[ ] + [ A , D(B) ] ! C

(3)

N(A), D(B)の意味については注1を参照)

を導き,ハイゼンベルクの不等式は,平均誤差と平均擾乱(注1)が測定対象の物理状態によら ず一定な場合には成立するが,そうでない場合には,一般に成立しないことを明らかにしました。 また,(3)式から,誤差,擾乱,ゆらぎの間に常に成立する新たな関係式

(4)

σ(A), σ(B)の意味については注3を参照)

を導きました。この(4)式は,実験的に計測可能な関係式で,特に,「小澤の不等式」と呼ばれて います。小澤の不等式は,ハイゼンベルクの不等式に代わって常に成立し,測定誤差と擾乱のト レードオフの関係を初めて一般的に証明した革新的な理論式です。C≠0のときハイゼンベルクの 不等式では,ε(A)=0ならη(B)は発散し,η(B)=0ならε(A)は発散しますが,(4)式から,ε(A)=0で もη(B)は発散しないで

(5) となること,同様にη(B)=0でもε (A)は発散しないで

(6) となることが導かれ,ハイゼンベルクの不等式から導かれた定説を覆す新たな関係が導かれます。 さらに,ε(A)=0またはη(B)=0の場合には,両辺の等号が成立する測定装置があることが知られて います。しかし,そうでない場合に,両辺の等号が成立する場合があるのか,より厳しくかつ常 に成立する不等式は存在するのか,等の新たな疑問も生まれました。

!(x)!( p) ! !

2

ε (A) η (B) ! C

C ! 1

2 [ A, B ]

!(A)"(B) +!(A)# (B) +# (A)"(B) ! C

! (A)"(B) ! C

!(A)" (B) ! C

(3)

2013年,クイーンズランド大学(オーストラリア)のブランシアードは,小澤の不等式を改良 して,ε(A)=0またはη(B)=0以外の場合にも等号が成立する場合がある,より厳しい関係式(「ブ ランシアードの不等式」)

(7)

を導きました(注4)。また,ブランシアードは,電子スピンの向きの測定や光子の偏光の測定の 場合などにおいて成立するさらに厳しい不等式

(8)

も導きました。ここで, , です。この不等式は理想的な場合には

両辺の間に等号が成り立つことがわかっています。

昨年来,本研究グループを含む複数の実験グループが,中性子や光子を用いた実験で,ハイゼ ンベルクの不等式(2)が破れ,小澤の不等式(4)が成立することを実験的に検証してきています(例 えば,本研究グループによる2013 717日報道発表)。その後,新たに提案されたブランシ アードの不等式 (7), (8)の実験的検証が期待されていました。

<研究の方法>

今回,本研究グループは,光の偏光に関する「弱測定」と呼ばれる新たな計測法を用いて,小 澤の不等式とブランシアードの不等式が成立すること,そして測定された誤差と擾乱の関係が, ブ ラ ン シ ア ー ド の 不 等 式(8)が 予 言 す る 限 界 に 近 い も の と な っ て い る こ と を 実 験 的 に 初 め て 確 認 しました。今回の研究では,光の量子である「光子」(注5)の偏光(注6)を用い,縦横方向の 偏光測定の強度を変化させたときの,「縦横方向の偏光測定における誤差」および「その測定によ って斜め45度方向の偏光が受ける擾乱」を計測しました。測定誤差と擾乱の計測には,3状態法 と呼ばれる方法と,今回採用した弱測定法と呼ばれる二つの方法が知られています。弱測定とは, 測定の強さをできる限り弱めることで,測定対象となる系の状態をほとんど変えずに測定を行う 計測法です。誤差や擾乱の計測を行いたい実験装置(MA)の前段に弱測定の実験装置(WP)を 配置し,WPの測定結果とMAの測定結果を比較することで,MAの誤差や擾乱を計測すること ができます。本研究では,測定の強さが非常に弱いWPを採用し,測定対象となる系(すなわち 光子の偏光状態)をほとんど変えることなく,精密に誤差や擾乱を評価する手法を開発しました

( 図 1 )。 ま た , こ の 測 定 系 は , ブ ラ ン シ ア ー ド の 不 等 式(8)が 成 立 す る た め に 必 要 な 条 件 を 満 た しています。これらの技術を用いることで初めて,ブランシアードの不等式(8)における下限に近 づく明瞭な検証実験が可能になりました。

<成果の内容>

図2に,MAにおける縦横方向の偏光測定の強度を変化させたときの,「縦横方向の偏光測定に おける誤差」および「その測定によって斜め45度方向の偏光が受ける擾乱」の計測結果を示しま す。測定強度が大きくなるに伴い,誤差は減少する一方,擾乱は増大し,両者の間にトレードオ フの関係があることがわかります。

図3に,MA における測定の強度を変化させたときの,誤差および擾乱に関するハイゼンベル クの不等式(2),小澤の不等式(4),ブランシアードの不等式(7)および(8)の左辺を示します。この

! (A)

2

" (B)

2

+ " (A)

2

# (B)

2

+ 2 ! (A) # (B) " (A)

2

" (B)

2

! C

2

" C

2

! ! (A)

2

! (B)

2

+ ! (A)

2

! ! (B)

2

+ 2 ! ! (A) ! ! (B) ! (A)

2

! (B)

2

! C

2

" C

2

! ! = ! 1 ! !

2

/ 4 ! ! = ! 1 ! !

2

/ 4

(4)

実験では,不等式の右辺は C=0.995 になります(注6)。図から明らかなように,ハイゼンベル クの不等式の左辺は右辺を下回り,不等式(2)が破れているのに対し,小澤の不等式(4),ブランシ アードの不等式(7)および(8)は保たれていることがわかります。特に,不等式(8)の左辺は,不等式 が予言する下限C=0.995に近い値となっており,不等式(8)において等号が成立する条件に近い状 態が実現されていることがわかります。また,図の実線は測定に用いた光学素子(偏光プリズム) の不完全性を考慮した場合の理論値で,実験値をよく再現していることがわかります。

図4に,誤差と擾乱に関する測定結果と不等式の下限値を,誤差を横軸,擾乱を縦軸にプロッ トしたものを示します。実験結果はハイゼンベルクの不等式を破り,他の不等式は満たす領域に あることがわかります。このことは,二つの物理量(この場合は縦横方向偏光と斜め45度方向の 偏光)に関する誤差と擾乱がハイゼンベルクの不等式から予言される下限値よりも小さいこと, すなわち,二つの物理量がハイゼンベルクの不等式によって制限されると思われていたものより も高い精度で同時に測定可能であることを示しています。また,実験結果は小澤の不等式を満た していますが,小澤の不等式における下限値よりもかなり大きい領域にあります。その一方で, 実 験 結 果 は ブ ラ ン シ ア ー ド の 不 等 式(8)の 下 限 に 近 接 し て お り , 理 想 的 な 実 験 を 行 っ た 場 合 に は ブランシアードの不等式(8)が誤差と擾乱の関係の下限値を与えることがわかります。

<研究の意義および今後の展開>

量子力学が誕生してほぼ100年となりますが,小澤の不等式を契機として,「不確定性関係」に 関する議論がたいへん活発になっています。理論的には,小澤の不等式を改良したブランシアー ドの不等式の導出や,それらとは異なる誤差,擾乱の定義に基づく不確定性関係の提案など,多 く議論が活発に行われています。実験的には,前述したように,中性子や光を用いた検証実験が 行われ,ハイゼンベルクの不等式が破れる場合があること,その場合でも小澤の不等式が成立す ることが検証されています。これらの研究の潮流の中で,本研究のもつ意義は二つあります。

1. 本研究は,新たに提案されたブランシアードの不等式に対する初の検証実験となります。 従 来 の 検 証 実 験 に よ っ て , ハ イ ゼ ン ベ ル ク の 不 等 式 が 破 れ , 小 澤 の 不 等 式 が 成 立 す る こ と は わ か り ま し た が , 誤 差 と 擾 乱 の 不 確 定 性 関 係 を 保 ち つ つ そ れ ら を ど こ ま で 小 さ く す る こ と が で き る の か , そ の 下 限 は 明 ら か で は あ り ま せ ん で し た 。 本 研 究 に よ っ て , 小 澤 の 不 等 式 よ り も 厳 し い ブ ラ ン シ ア ー ド の 不 等 式 が 検 証 さ れ る と と も に , 誤 差 と 擾 乱 が 達 し 得 る 下 限 に 関 し て 新 た な 知 見 に 達 す る こ と が で き ま し た 。 な お , ブ ラ ン シ ア ー ド の 不 等 式 に つ い て は , オ ー ス ト ラ リ ア の 研 究 グ ル ー プ も 本 研 究 と は 独 立 に 検 証 実 験 を 行 っ て お り , そ の 結 果 は 本 研 究 と 同 時 に 同 じ 雑 誌 ( フ ィ ジ カ ル ・ レ ビ ュ ー ・ レ タ ー ズ ) へ の 掲 載 が 決 定 し て い ま す 。 本 研 究 が 国際的にも注目され,競争が激化している分野における成果であることの証左でもあります。 2. 本研究では,弱測定法と呼ばれる新たな計測法を用いて誤差と擾乱を計測しました。弱測

定 法 は , 誤 差 と 擾 乱 を 計 測 す る 以 外 に も , 被 測 定 系 の 状 態 を 変 化 さ せ ず に 物 理 量 を 計 測 す る 一 般 的 な 計 測 法 と し て 期 待 さ れ , 近 年 盛 ん に 研 究 さ れ て い ま す 。 従 来 は , 理 想 的 な 弱 測 定 を 実 現 し て 誤 差 , 擾 乱 を 計 測 す る こ と は 困 難 で し た が , 本 研 究 で は , 被 測 定 系 の 状 態 を ほ と ん ど 変 化 さ せ な い ほ ぼ 理 想 的 な 弱 測 定 系 を 開 発 し , 誤 差 と 擾 乱 の 計 測 に 用 い ま し た 。 こ の よ う な 技 術 を 用 い て 初 め て , 上 述 し た よ う な 誤 差 と 擾 乱 に 関 す る 明 瞭 な 検 証 実 験 が 可 能 に な り ま した。

(5)

本研究の成功は,物理のみならず科学技術一般に広く行われる「測定」という行為に対し根本 的な制限を課す「不確定性関係」への見直しとなることはもちろん,従来の不確定性関係の枠を 超えた超精密測定技術や新たな量子情報通信技術の開発などの多くの応用を拓くものであり,量 子物理の基礎のみならず応用上もたいへん重要な成果です。

今回の研究では,1個1個の光子の偏光の測定における誤差と擾乱を計測し,その関係がハイ ゼンベルクの不等式を破ることを検証し,小澤やブランシアード等による新しい不等式を満たし ていることを観測しました。光子の偏光は,各々の測定結果は2通り(例えば縦偏光と横偏光の どちらか)となる点で,電子や中性子における「スピン」と同じ2次元系とみなされる状態です。 今後は,さらに次元の高い物理状態や,ハイゼンベルクのガンマ線顕微鏡の思考実験で出てくる 位置と運動量などのように,連続的な値を取り得る物理状態に対する不確定性を検証する実験に も取り組みたいと考えています。そのような研究を通して,不確定性に関するさらなる理解と応 用が広がるものと期待しています。

<研究助成資金等>

 総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE) 121806010(研究代表者:小澤正直)

 文部科学省・日本学術振興会グローバル COE プログラム「情報エレクトロニクスシステム 教育研究拠点」(東北大学,拠点リーダー:安達文幸)

 John Templeton 財団・研究助成 35771(研究代表者:小澤正直)

 日本学術振興会 科学研究費補助金 21244047(研究代表者:小澤正直)

<掲載論文名>

“Experimental Test of Error-Disturbance Uncertainty Relations by Weak Measurement”

(弱測定による誤差−擾乱の不確定性関係の実験的検証)

Fuminhiro Kaneda, So-Yong Baek, Masanao Ozawa, and Keiichi Edamatsu

Physical Review LettersAmerican Physical Society 201411 日(オンライン版)

(6)

<参考図>

図2. MA における縦横方向の偏光測定の強度(横軸)を変化させたときの,縦横方向の偏光測定 における誤差(青)および斜め45度方向の偏光測定の擾乱(赤)。丸,四角等のマークが計測結果 で ,測 定 強 度 が 大 きくな るに 伴 い ,誤 差 は 減 少 す る一 方 ,擾 乱 は 増 大 す る。破 線 は 理 想 的 測 定 装 置の理論値,実線は実際の測定装置の性能を加味した理論値。

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.5 1.0 1.5

ErrorandDisturbance

Measurement strength (cos 2θ) (a)

図 1 . 光 子 の 偏 光 に お け る 弱 測 定 法 を 用 い た 測 定 誤 差 と 擾 乱 の 計 測 装 置 。 半 導 体 レ ー ザ ー (LD) か ら 出 た 光 は 単 一 光 子 レ ベ ル ま で 減 光 さ れ た 後 , 円 偏 光 と し て 装 置 に 入 射 す る 。 中 央 の 黄 色 の 部 分が弱測定(WP)の実験装置で,縦横偏光(誤差の計測の場合)あるいは斜め45度方向(擾乱の計 測 の 場 合 ) の い ず れ か の 偏 光 測 定 を 弱 い 測 定 強 度 で 行 う 。 そ の 後 の 水 色 の 部 分 が 主 測 定 装 置 (MA)であり,縦横方向の偏光測定を種々の測定強度で行う。その後の紫色の部分(PM)は斜め 45 度方向の偏光測定を行う。各々の測定装置によって2光路のどちらかに出力された光子は,最後に 8台の検出器のいずれかで検出される。光子がどの検出器で検出されたかによって,WPMAおよ び PM の測定結果がわかる。WP の測定結果とMA(PM)の偏光測定の結果を比較することで誤差

(擾乱)を計測する。

LD

Weak Probe (WP)

Measurement Apparatus

(MA)

Measurement Apparatus

(MA) State Preparation

0i

1i

0j

1j

0j

1j

HWP (22.5°) POL QWP

ATT

0k

1k

0k

1k

0k

1k

0k

1k cos 2W= 0.104

Fiber-coupled single photon detector

PBS Post X Measurement

(a)

Post X Measurement

(7)

図3. MA における測定の強度(横軸)を変化させたときの,誤差および擾乱に関する不等式の成 立 状 況 。丸 ,四 角 等 の マ ー クは 実 験 結 果 ,破 線 は 理 想 的 測 定 装 置 の 理 論 値 ,実 線 は 実 際 の 測 定 装 置 の 性 能 を 加 味 し た 理 論 値 。 青 の デ ー タ が ハ イ ゼ ン ベ ル ク の 不 等 式(2)の 左 辺 , 赤 の デ ー タ が 小 澤 の 不 等 式(4)の 左 辺 ,紫 お よ び 緑 の デ ー タ が ブ ラ ン シ ア ー ド の 不 等 式(7)お よ び(8)の 左 辺 。不 等式の右辺はいずれもC=0.995であり,中央のグレーの実線で表す。ハイゼンベルクの不等式(2) の左辺は右辺を下回り,不等式が破れているのに対し,その他の不等式(4)(7), (8)は保たれてい る。特に,不等式(8)の左辺の実験値は下限値C=0.995に近い。

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

LHSofEDR

Measurement strength (cos 2θ) (b)

図 4. 誤 差 と擾 乱 に 関 す る測 定 結 果 と不 等 式 の 下 限 値 を,誤 差 を横 軸 ,擾 乱 を縦 軸 に プ ロットした も の 。 黒 丸 は 実 験 結 果 , 黒 点 線 は 実 際 の 測 定 装 置 の 性 能 を 加 味 し た 理 論 値 。 青 の 実 線 が ハ イ ゼ ン ベ ル ク の 不 等 式(2),赤 の 点 線 が 小 澤 の 不 等 式(4),紫 の 破 線 お よび 緑 の 一 点 鎖 線 が ブ ラン シ ア ードの不等式(7)および(8)における下限値。各々の下限値より左下方は不等式を破る領域である。 実験値はハイゼンベルクの不等式を破り,他の不等式は満たす領域にある。特に,ブランシアー ド の不等式(8)の下限に近接していることがわかる。

!

!

!

!

!

!

!

!

!

!

0.0 0.5 1.0 1.5 0.0

0.5 1.0 1.5

Ε!Z"

Η!X"

(8)

<用語説明>

注1)2乗平均平方根誤差と平均誤差

測定したい物理量をAとし, Aを測定する装置が示す値の物理量をMとする.この測定に 関するAの誤差を表す物理量を

N (A) ! M " A

と書く.このとき,Aの「2乗平均平方根誤 差 」 は

! (A) = (N (A)

2

と 定 義 さ れ る . こ こ で は , 測 定 対 象 の 物 理 状 態 に 対 す る 平

均値を表す。また,Aの「平均誤差」は

N (A)

と定義される.測定対象の物理状態によら ず平均誤差が0となる場合,その測定を「不偏測定」と呼ぶ.

次に,物理量B の擾乱を表す物理量を

D(B) ! B'" B

と書く.ここでB’ は,A の測定によ

る擾乱を受けた後のBを表す物理量である.

D(B)

に対しても,誤差の場合と同様に2乗平 均平方根擾乱

! (B) = (D(B)

2

と平均擾乱

D(B)

が定義される. 注2)式(2)の説明

量子力学では,物理量(位置や運動量など)は波動関数に作用する「演算子」として扱われ る。二つの演算子ABを考えたとき,AB=BAが成立するとき,それらは「交換する」と

いう。また, を「交換子」と呼ぶ。 は,対象の物理状態に対する平

均値を表す。(2)式から,ABが交換するとき,右辺は0となって,Aの誤差(ε(Α))とB の擾乱(η(B))はどちらも0となり得ることがわかる。ところが,ABが交換しないとき ときには,右辺は一般的に0ではなく, Aの誤差(ε(Α))と Bの擾乱(η(B))との間に, 一方が小さいと他方が大きくなる(特に,一方が0であれば他方は無限大となる)トレード オフの関係があることがわかる。

注3)二種類の「ハイゼンベルクの不等式」(あるいは「ハイゼンベルクの不確定性関係」) (1)お よ び(2)式 は , 測 定 誤 差 と 擾 乱 に 対 す る ハ イ ゼ ン ベ ル ク の 不 等 式 で あ り , 本 文 で 述 べ た ガンマ線顕微鏡の思考実験に対応する不等式である。一方,同じくハイゼンベルクの不等式 と呼ばれるもう一つの不等式が存在する。それは

(*) と表される。右辺は(2)式と同じであるが,左辺の σ(A), σ(B) は各々,対象の物理状態にお けるAおよびBのゆらぎ(ABをそれぞれ独立に観測したときに得られる結果のばらつ きを標準偏差で表したもの)である。これらは,(2)式における測定誤差と擾乱とは全く別の 量 で あ り ,(2)(*)と は 物 理 的 に 異 な る こ と が ら を 表 し て い る 。 に も か か わ ら ず , ど ち ら も 同じく「ハイゼンベルクの不等式」(あるいは「ハイゼンベルクの不確定性関係」)と呼ばれ ているために,相当の混乱が生じている。(*)はロバートソンによって数学的に証明されてお り(従って常に成立する),「ロバートソンの不等式」とも呼ばれる。測定誤差と擾乱に関す る不等式(2)は,(*)にさらにある仮定を加えて導かれるという関係にある。従って,(2)はそ のような仮定の下でのみ成立するものであり,仮定が満たされないときには(本研究で検証 したように)破れる場合がある。量子力学の初等的教科書では大抵, (*)をハイゼンベルク の不確定性関係と呼び,(2)と区別していないため,大きな混乱を招いている。本研究で「ハ

...

[ A, B ] ! AB " BA ...

! (A) ! (B) ! C

(9)

イ ゼ ン ベ ル ク の 不 確 定 性 関 係 」 の 破 れ を 検 証 し た の は(2)式 に つ い て で あ り ,(*)式 で は な い ことに特に注意されたい。

注4)ブランシアードの不等式と小澤の不等式,ハイゼンベルクの不等式の関係 ブランシアードの不等式(7)から,さらに簡単な不等式

(7’) を導くことができる((7’)の両辺を二乗して(7)と比べるとわかる)。(7’)は,小澤の不等式(4) から第1項(ハイゼンベルクの不等式(2)に現れる項)を取り除いたものである。従って,(7’) は小澤の不等式(4)を含み,(7)(7’)を含む。つまり,ブランシアードの不等式(7)から小澤の 不等式(4)を導くことができる。ただし,ε(A)=0またはη (B)=0の場合は,ブランシアードの 不等式と小澤の不等式は同じ不等式を表す。

注5)光子

光の量子.光量子ともいう。

注6)偏光

光の波(電磁波)としての振動方向を偏光という。1個の光子の偏光状態は,1つのスピン のように振る舞い,量子情報の基本単位である量子ビット(キュービット)としても利用さ れる。光子の縦横方向の偏光測定の演算子と,斜め45 度方向の偏光測定の演算子とは交換 しない(注2参照)ため, (2)あるいは(4)式の右辺が0ではなくなり,測定誤差と擾乱に関 する不確定性関係の検証に利用できる。

注6)不等式の右辺

今回の実験では,装置に入射する光の偏光状態として円偏光を用いた。この場合,「縦横方 向の偏光(A)」および「斜め45度方向の偏光(B)」に関する不確定性関係の右辺は,理想 的には となる。今回の実験条件では,MA に入射する光子の偏光状態は WPの微小な影響を受けて僅かながら変化するため,C=0.995になると見積もられる。

! (A) " (B) + ! (A) " (B) ! C

C ! 1

2

A , B

[ ] = 1

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